メタストアでショールーム:アパレル、テキスタイルの3D展示でリアルなメタバース商空間

社歴350年の実績を誇る繊維専門商社であるモリリン株式会社(以下、モリリン)は現在、株式会社ハコスコのECメタバース「メタストア」を活用し、アパレルおよびテキスタイルをメタバース上で展示する取り組みを始めています。

クリエイタープロジェクト「#AAAA」の3D ECストアがオープン。ハコスコが制作協力いたしました。

本記事では、アパレル分野におけるメタストアのメリットや課題、今後のメタストアの活用などについて、モリリン営業の伊藤 拓さんと、CADパターンナーの茂木さんにお話を伺いました。

メタバースでも「現実と同じ商品」を展示する

ーーー社歴350年という伝統を誇る中で、メタバースや3Dモデルといった最先端の技術を積極的に取り入れている御社の姿勢は非常に魅力的です。今回、どのような理由でメタストアを選ばれたのでしょうか?

伊藤:当社は繊維専門の商社という業態で、直接店頭で小売するケースは稀です。主に、アパレルのOEM(※)であったり、大手スーパーや専門店の注文を受けてから製造販売をしています。

そしてアパレルに対して提案をする際に、3DCGのサンプルを制作しています。メタストアはそのような3DCGサンプルを展示するのに最適だったうえ、なおかつ「おもしろい」と感じたのがひとつです。

※ Original Equipment Manufacturer; 他社ブランドの製品を製造すること

ーーーこれまで数ヶ月間メタストアを使用してみて、感じた課題点などはありますか?

伊藤:弊社は3DCADツールである「CLO(クロ)​​」というソフトウェアを用いて服の制作を行なっています。CLOでは、最終的に製品にも採用される原物の2Dパターンを用いたシミュレーションを行います。それもあって、各アイテムのファイルサイズがオリジナルのままでは大きすぎ、読み込みが重くなってしまいました。

とはいえ製品に使用するデータの方をメタバース側に合わせて軽量化するのでは本末転倒です。「実際に洋服にできるデータ」をそのまま使っていることに大きな意味を感じていますから。

茂木:例えば、商品をメタストアにアップロードする際、高々10MB以内になるようにリサイズや圧縮をする必要がありました。オリジナルのデータでは数十MBあるファイルですので、リアルに近い鮮明な商品をメタストアに展開するためには、こうしたファイルサイズやロード時間の問題を解決していく必要があると感じました。

藤井:なるほど。読み込み時間の遅さは致命的ですよね。ちょうど現在、メタストアの開発チームではダウンロードの高速化に取り組んでいますので、数ヶ月以内にある程度の改善が見込まれると思います。まずはそのアップデートを試していただきたいです。

ーーー繊維商社さんでは、さまざまな商品が扱われていることと思います。多種多様な商品をショールームとして見栄え良く展示するために、どのようなバーチャル環境が望ましいと思いますか?

茂木:商品それ自体を良く見せたいので、スッキリしたシンプルなスペースで展示できるのが理想です。メタストアにはたくさんのテンプレートが用意されていましたが、白背景などのシンプルなデザインがなかったのが少し気になりました。

ーーーおっしゃる通りですね。ショールームに適したシンプルな背景も、今後追加させていただきます。

「メタバースの商品」を現実に置くAR

藤井:今後メタストアにはAR機能が実装される予定です。AR機能を使えば、メタストア内の商品をスマートフォンのカメラなどで読み込むことで、現実環境にメタストア内のバーチャルオブジェクトを置くことができます。

この機能は、先ほど話題に上がった読み込み時間の遅さを、別の角度から解決してくれるかもしれません。AR表示用のファイルサイズは、メタストアに比べて多少大きくても問題ないのではないかと考えています。一度に全ての商品をダウンロードするのではなく、商品を一つ一つ手に取るように読み込むことになるからです。

伊藤:それはとても興味深いです。AR機能を用いて、現実環境の人が服を「試着」できるようになったら面白いですね。

藤井:例えば、いまメタストアでは、家具メーカーであるイトーキさんの椅子をARで現実空間に置くことができます。メタストアに並んでいる椅子のオブジェクト一つ一つに付与されているQRコードをスマホで読み込むと、その椅子が現実空間に実寸大で再現されます。

メタストアでは、バーチャルとリアルをシームレスに行き来しながら、その都度商品の販売において重要な体験を提供したいと考えています。御社のカタログにある素材や商品も、こうしたAR機能を用いたデモと相性がいいのではないでしょうか。

https://meta.hacosco.com/cases/itoki/

伊藤:実際にQRコードを読んで試してみたのですが、確かにこれはすごいですね。本当に実際のサイズなんですね。

藤井:スマホを持ったまま近づくと、より繊細なテクスチャの質感を感じられます。利用者が実際に生活している空間の中で商品を見てもらえることには、大きなセールス効果があると思います。フラットなモニターに映る画像を見るのと、住み慣れた空間に三次元的に配置して、近寄ったり離れたりして確認するのとでは、印象は大きく違いますからね。

ショールームとしてのメタバース

ーーーメタストアを今後、どのような用途に活用していきたいですか?

伊藤:展示できる商品の質と量が増えていけばいいなと思ってます。例えば「展示スペースの大きさ」とか「1アイテムのデータ容量」ですね。バーチャル空間にサンプル室があって、現実で制作した商品をどんどんストックしていく。そこを覗けば、いつでも、誰でも、全ての商品を、現実と同じように見ることができるというのが理想です。

茂木:それから、学生の学びの場であったり、ポートフォリオとして、メタバースを活用するのも良いなと思いました。例えば、東京・中野にある織田学園という専門学校には、弊社も使用しているソフトウェアであるCLOが約10台分導入されていて、弊社も一部資金提供を行っています。

学生全員がCLOを使って3Dを扱っているわけではありませんが、CLOは洋服業界でも最先端のソフトウェアで、就職活動において有利に働くスキルです。今後は、デザイナーであっても3DCGを扱う機会は増えていくと思います。

繊維専門商社のモリリンが織田ファッション専門学校との産学連携プロジェクトとして展示会を開催。ハコスコが制作協力いたしました。

空間カスタマイズの容易さ

ーーー御社では今後、メタバースを実用的に活用されていくことと思います。今後メタストアに期待するのはどのようなことでしょうか?

伊藤:商社という業態では、「決まりきったお店」をもつことがほとんどありません。さまざまな要素がお客さんに左右されやすいからです。営業一人一人によってもやりたいことが違うというケースも珍しくありません。お客さんや営業など、各利用者にとって最適な形式にカスタマイズできる柔軟なシステムだと、非常に使いやすいなと思います。

また、人だけでなく場所によってもさまざまな要素が変化します。例えば、現実の展示会場に合わせてメタバース空間もトレースしたい場合、会場の幅や奥行き、天井の高さ、柱の位置や壁紙の色などをカスタマイズできる必要があります。もちろん展示会場は展示会ごとに変わるので、そうしたシステムのカスタマイズを頻繁に、簡単に行えると嬉しいです。

藤井:実はハコスコ社も、本社の機能をメタバース空間に移転しているところです。現実のオフィスと同じバーチャル環境をメタストアで作っています。

近年では、現実の空間をスキャンして3DCG化することが非常に簡単になってきています。例えばモリリンさんが所有している展示会場を事前にスキャンしておけば、それをベースに壁紙を変更したり写真を配置したりするのは非常に簡単です。

もしよろしければ、ぜひ一度展示会場をスキャンしに行かせてください。御社の展示会場をメタバースにも「コピー」して、ハイブリッド形式の展示を実施するのも、面白そうですね。

伊藤:それはぜひやってみたいです。

藤井:ちなみに、今どきの専門学校の学生さんは、メタバースや3Dに興味はあるのでしょうか?

伊藤:ゲームやアニメの影響もあってか、学生さんはみんな、メタバースや3Dが大好きですね。今後、学生さんとのコラボレーションも積極的にチャレンジしていきたいです。

藤井:試してみたいデータやサンプルなど、ご希望のものがあればいつでもご準備いたします。いまはまだ実験段階だと思いますが、あらゆることを試しながら、理想的なメタバースを一緒に実現していきましょう!今後とも引き続き、よろしくお願いします。

伊藤:よろしくお願いします。